けろこ堂日乗(β版)

けろこ堂日乗のHatenaブログ版です。

小説

Something wonderful!

ついこの間「2001年だ!」と騒いだと思ったら、もう2010年である。(以下,ネタばれが含まれますのでご注意) 2001年には「HALは結局できなかった」とか「有人木星ミッションなんて無理」とかいろいろと喧しいことを言う人が多かったが、今年は「木星が2番目…

祝復刊! シャドー81

1975年に発表された航空サスペンスの傑作が久々に復刊された。1977年に新潮社から文庫で発売されたこの作品は、当時の海外ミステリイとしては記録的な販売部数を達成したという。航空サスペンスともミステリイとも呼ぶことはできるが、この作品はそうしたジ…

バイバイ、マイクル

またしても巨星の訃報である。 亭主がマイクル・クライトンの「アンドロメダ病原体」を初めて読んだのは中学生の時。世の中にはこんな緻密なSFを書ける人がいるんだ、と感動し大きな影響を受けた。環境に適応しつつ次々と性質を変える謎の病原体を追い詰め…

詩羽のいる街

山本弘の最新刊を読んだ。「詩羽(しいは)」はこの作品のヒロインの名前。おそろしく賢いことは間違いないが、決して超能力者でも異世界の住人でもない。まったく当たり前の女の子だ。彼女の仕事は「人に親切にすること」。 何しろ山本弘である。「またまた…

蒼路の旅人・天と地の守り人(三部作)

全巻を軽装版で揃えるつもりでいた「守り人・旅人シリーズ」だが、「蒼路の旅人」を読んだところでとうとう我慢できなくなり、ハードカバーに手を出してしまった。亭主と同じ羽目に陥った方は少なくなかろう。「蒼路の旅人」と「天と地の守り人」それぞれ独…

ショコラティエの勲章

著者の上田早夕里は小松左京賞受賞のSF作家だが、この作品は(敢えて分類すれば)ミステリイだ。 神戸の老舗和菓子店に勤める主人公の女性と、名人ショコラティエの交流を軸に6編の物語が綴られている。ミステリとはいっても、殺人事件もなければ驚くような…

シュレディンガーのチョコパフェ

山本弘の短編集「まだ見ぬ冬の悲しみも」の改題再刊である。 やっと読めた。面白い。 山本弘と言えば「と学会」。その活動(?)によって通暁した「とんでもネタ」を総動員して書かれた「神は沈黙せず」は、亭主のお気に入りだ。 本作品集にも、その該博な知…

神の守り人

またも上橋菜穂子である。まぁ、好きなんだから仕方がない。 待望の軽装版「神の守り人」が発売された。買ったとたんに読んでしまったが、改めて上橋の実力を思い知らされた。 主人公であるバルサが背負う宿命、もう一人の主人公であるアスラが背負う宿命、…

有頂天家族

森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」(d:id:mhana:20070204を参照)が第20回山本周五郎賞だそうだ。めでたいことだ。亭主はこの賞がどれほど有り難いものかは知らぬが、きっと森見氏の原稿単価アップにつながるであろうし、出版社の待遇も良くなるのだろう…

ウォッチメイカー

ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム シリーズ最新刊である。今回は、リンカーンにとって最強の敵「ウォッチメイカー」が登場する。どう最強なのか?リンカーンは勝利するのか? 例によって、ミステリィはネタバレになるようなことは書けないし、…

遠まわりする雛

米澤穂信の「古典部シリーズ」最新刊である。野生時代などに掲載された短編に、書き下ろしの表題作を加えた作品集になっている。 ミステリイの紹介は難しい。下手を書けばネタバレになってしまうし、かといって「面白いから読め」ではいくらなんでも愛想がな…

獣の奏者

この上橋菜穂子のファンタジーが何やらのランキングで1位になったようだ。結構なことだ。いわゆる幻獣、神獣の類はファンタジーにかかせないが、その生態を物語の中核に据えた作品はそれほど多くないと思う。「獣の奏者」はそういう希有な作品だ。 闘蛇とい…

図書館の小説

1ヶ月以上更新をさぼってしまった。別に夏休みというわけではないのだが。 そこで、夏休みといえば図書館である。(笑) 有川浩の「図書館戦争」を読んだ。著者は「電撃」出身。 メディアの検閲が合法化された日本で、図書館の自主独立を守るために結成され…