2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧
亭主が松岡正剛氏の名を知ったのは「遊」という雑誌を手にした時が最初であったと思う。当時は大学の3年くらいではなかったか。なんだか難しいことが書いてあるが、格好がよい本だ、と思った。それが伝説の雑誌であることを知るのは、ずいぶん後になってから…
「国家の品格」ですっかり有名になった藤原正彦教授の初期のエッセイである。「若き数学者・・・」は著者がエッセイストとして世に出た第一作といってよい。著者の最初の留学体験を綴ったもので、海外留学の体験談として楽しめるし、ポスドクの若手研究者の…
皇なつきは上手い。本当に上手い。絵だけで酔わせてくれる数少ない漫画家だと思う。彼女の個人的な情報はほとんど知らないが、中国絵画、特に近代の水墨画に関心を寄せていることは窺い知れる。さすがに筆書きではないが、水墨画の素描を思わせるタッチは、…
この本のサブタイトルを見てピンときたら、あなたは地図マニアだ。 新田次郎の手になるこの作品は、山岳小説の傑作であるとともに、非常に珍しい地形測量をテーマにした小説でもある。サブタイトルの「点の記」とは、三角点を設置する際に作成される記録のこ…
あじま(吾妻ひでお)大先生の「失踪日記」を描いている頃の日記(?)である。また作品が読めることがなによりもうれしい。もちろん、失踪からお戻りになって、ちゃんと仕事もされていたので、正しいファンの人たちはちゃんとチェックしてたでしょうが、亭…
暗号と数学の関係はとても深い。現在の情報通信や個人認証などで広く利用されている「公開鍵暗号」システムは、その理論的な根拠も強度の程度も全て数学によって説明できる。この方式は1977年にリベスト、シャミア、アデルマンの3人により発表されたRSA暗号…
大分古い本だが、最近文庫版が出た。ワイルズの証明がハイライトであるのはもちろんだが、ピュタゴラスに始まる数論の歴史をわかりやすく紹介しており、数学史の読み物としても優れている。数式のそれなりに出てくるが、基本的には四則演算なので亭主にも理…
この本は実話ではない。しかし、「ゴールドバッハの予想」は実在する数学の問題で、予想が提示されてから約250年間たった今日でもまだ証明されていない。「2より大きい偶数は2つの素数の和である」 これが「ゴールドバッハの予想」だ。この問題は数学の中…
ブラックホールの入門書。大変わかりやすくて良くまとまっている。 著者は現役の研究者で、降着円盤の研究では日本有数の実績を持つ。なによりもこの先生、SFやアニメ大好きの人(要するに亭主のお友達系)なので、SFファンが知りたいと思う点がちゃんと説明…
飛浩隆の長編。「廃園の天使」シリーズ第1作。といっても第2作以降は未刊だ。 読んだのは大分前だが、久々に読み応えのあるSFだと思った。 登場人物(?)はヴァーチャルスペースに構築されたリゾート地に住んでいるAI達。彼らはヴァーチャルリゾートを訪れ…
飛浩隆の短編集が2005年度SF大賞である。 この作品集は美しい。そして凄惨である。 短編とはいえ、冒頭から最後の一語まで刃のような緊張感を維持しつつ、決して飽きさせることのない文章力は驚くべきものだ。緻密でありながら、どこかが決定的に日常とずれ…