けろこ堂日乗(β版)

けろこ堂日乗のHatenaブログ版です。

SF

バイバイ、ジュピター

SF

小松左京先生ご逝去。 またしてもSF界の巨匠が逝ってしまった。 若い世代の方にはピンとこないかもしれないが、亭主達の世代が感じているであろう喪失感を伝えるのはあまりにも難しい。小学生の自分に大阪万博や空中都市008で未来をみせてくれた恩人。 中学…

Something wonderful!

ついこの間「2001年だ!」と騒いだと思ったら、もう2010年である。(以下,ネタばれが含まれますのでご注意) 2001年には「HALは結局できなかった」とか「有人木星ミッションなんて無理」とかいろいろと喧しいことを言う人が多かったが、今年は「木星が2番目…

バイバイ、マイクル

またしても巨星の訃報である。 亭主がマイクル・クライトンの「アンドロメダ病原体」を初めて読んだのは中学生の時。世の中にはこんな緻密なSFを書ける人がいるんだ、と感動し大きな影響を受けた。環境に適応しつつ次々と性質を変える謎の病原体を追い詰め…

追悼! アーサー・C・クラーク

その訃報に接したのは今日の正午のニュースだった。 「アーサー・C・クラーク氏死去」 この日が遠からず訪れるであろうことは、分かっていた。しかし、やはりショックである。 月並みではあるが、「巨星、逝く」という言葉がこれ程ふさわしい人物はいない。…

シュレディンガーのチョコパフェ

山本弘の短編集「まだ見ぬ冬の悲しみも」の改題再刊である。 やっと読めた。面白い。 山本弘と言えば「と学会」。その活動(?)によって通暁した「とんでもネタ」を総動員して書かれた「神は沈黙せず」は、亭主のお気に入りだ。 本作品集にも、その該博な知…

水惑星年代記

暑い毎日が続いている。そのせいかメディアに「地球温暖化」という言葉が上らない日はない。亭主には「地球温暖化」なる現象の正体を論じるための知識も情報収集力もないので、この話題については「わからない」とはっきり言うことにしている。ただし、近年…

鯨の王

1998年だからもう10年近く前のことになるが、ボストンでホエールウォッチングに参加する機会があった。ボストンの港から1時間以上走って外海に出るとザトウクジラ(humpback whale)の群れに出会える。運が良ければ間近にブリーチング(背面跳びのように大き…

時をかける少女

昨年の夏に公開され、制作会社も配給会社も予想しなかったロングランを記録した作品だ。 アニメ・ファンの間で評判が高かったのはもちろんだが、アニメに関心のない層の支持を受けたことが、ロングランの一因になったと、配給側は分析している。作品を観て確…

ラギッド・ガール

待望の「廃園の天使」シリーズ第2巻である。SFマガジンで発表済みの中編に加え、新作書き下ろしの1編を含む中編集だ。 熱心なファンはきっとSFMで読んでたんだろうな、と思いつつ、最近ではSFMを本屋でみかけることがあまりない、というか真面目に探さない…

海底牧場

大学3年のゼミ説明会の時だ。説明を終えた教授が「質問はないか」と尋ねた。ある学生が「先生の宗教観は?」ときいた。教授はすぐに「特定の宗教を信心しているということはありません。まぁ、強いて言えばアーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』のよう…

天涯の砦

小川一水といえば、ここのところ星雲賞の長編(「第六大陸」)、短編(「老ヴォールの惑星」)をあいついで受賞し、すっかり若手SF作家としての評価が定着したように見える。一ファンとしては喜ばしいことだと思う。その最新作の「天涯の砦」を読んだ。 日本…

うつうつひでお日記

あじま(吾妻ひでお)大先生の「失踪日記」を描いている頃の日記(?)である。また作品が読めることがなによりもうれしい。もちろん、失踪からお戻りになって、ちゃんと仕事もされていたので、正しいファンの人たちはちゃんとチェックしてたでしょうが、亭…

グラン・ヴァカンス

飛浩隆の長編。「廃園の天使」シリーズ第1作。といっても第2作以降は未刊だ。 読んだのは大分前だが、久々に読み応えのあるSFだと思った。 登場人物(?)はヴァーチャルスペースに構築されたリゾート地に住んでいるAI達。彼らはヴァーチャルリゾートを訪れ…

象られた力

飛浩隆の短編集が2005年度SF大賞である。 この作品集は美しい。そして凄惨である。 短編とはいえ、冒頭から最後の一語まで刃のような緊張感を維持しつつ、決して飽きさせることのない文章力は驚くべきものだ。緻密でありながら、どこかが決定的に日常とずれ…