けろこ堂日乗(β版)

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遠まわりする雛

米澤穂信の「古典部シリーズ」最新刊である。野生時代などに掲載された短編に、書き下ろしの表題作を加えた作品集になっている。
ミステリイの紹介は難しい。下手を書けばネタバレになってしまうし、かといって「面白いから読め」ではいくらなんでも愛想がない。「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」という前作を読んだ方は、亭主が言うまでもなく、すでにこの本を手にとっているだろう。そういう読者のおかげで、発売後1ヶ月を経ずして重版だそうである。
一方、前三作を読んでいない方には「ちょっと待て」と言わざるを得ない。この作品を堪能するには、前作を読むべきだ。この作品が、単独では成立しない、という意味ではない。もっと積極的に「シリーズもの」の醍醐味を味わってほしいと思うからだ。著者がこのシリーズの登場人物達に託した、高校時代という特別なステージへの想いは、本書の表題作に昇華されていると思う。その昇華に至るには、前三作のプロセスが必要である、と亭主は考えるのだ。
まぁ、抽象的な話はこれくらいにして「自分の高校時代なんて、かゆくて、かゆくて」と思っているあなた。このシリーズを読んだ後には、違う想いがあるかもしれない。”千反田える”の名台詞「私、気になります」に誘われて、しばし米澤ワールドに浸ってみるのも、悪くないはずだ。

遠まわりする雛

遠まわりする雛

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件