けろこ堂日乗(β版)

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ラギッド・ガール

待望の「廃園の天使」シリーズ第2巻である。SFマガジンで発表済みの中編に加え、新作書き下ろしの1編を含む中編集だ。
熱心なファンはきっとSFMで読んでたんだろうな、と思いつつ、最近ではSFMを本屋でみかけることがあまりない、というか真面目に探さない自分が恥ずかしい。加藤さんが表紙を描いていた頃は、ほとんど毎号買ってたんだが・・・って何年前の話だ!
でも実際のところ、一時期のSFMのパワーダウンは悲しむべきものがあったと思う。SFは死んだのか、と本当に思いたくなった。それが、いつのまにか早川や創元じゃない本屋さんからSFらしきものが出るようになり、ライトノベルだといいながら結構侮れない作品が現れたりで、また読むのが追いつかない状態になってきた。ありがたいことです。
そんな状況下で、飛浩隆の存在は特別だと亭主は思っている。SFの美しさはつまるところ虚構の美しさだ、というのが亭主の想いだ。飛氏の作品には、虚構という概念のもつ「美しさ」そのものをテーマに作品を結晶させた、という衝撃がある。正確には「虚構」という言葉は適当ではない。Philippe Qu´eauが「ヴァーチャルという思想」で述べている、「ヴァーチャル」の概念が最も適当だが、「バーチャル」=「仮想」と解釈されてしまう日本のカタカナブンカにおいては、用いるべき言葉がない。
だから飛浩隆の作品は、
残酷で、そして美しい
と表現するしかない。
次作「空の園丁」はいつになるのだろうか。飛が再び美しき戦慄をもたらしてくれることを亭主は疑わない。待った甲斐のある作品を生み出す作家を知っているのは読書人の無上の愉しみなのだ。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

ヴァーチャルという思想―力と惑わし

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