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秒速5センチメートル

新海誠の最新アニメーション作品「秒速5センチメートル」。この作品を新海自身がノベライズした小説版「秒速5センチメートル」が出版された。
新海誠が「ほしのこえ」で一躍有名になったのは、2002年のこと。石原都知事を含め、世間一般の異様な反響にとまどったアニメファンは亭主だけではあるまい。その渦中の本人がどのような想いで、メディアの大騒ぎをみていたのかは知るよしもないが、その後に発表された「雲のむこう、約束の場所」、そして「秒速5センチメートル」を観るかぎり、その作風に大きな変化はないように思う。
ほしのこえ」は、”一人で創った”アニメ作品ということが強調されたが、そのこと自体はアニメーション作家としては、決して珍しいことではない。それよりも、背景のうまさに圧倒された、というのが亭主の感想だ。もちろん、商業アニメの背景として見ると、このレベルの仕事をする美術家は他にもいるだろう。しかしながら、「ほしのこえ」の絵作りには、商業作品にはない、生々しい感性が感じられた。
秒速5センチメートル」でも背景の美しさには特筆すべきものがあるが、この作品の良さは、短編映画としての完成度が高まったことだと、亭主は思う。
前作「雲のむこう、約束の場所」は、商業作品としての完成度を備えていたとはいえ、作者が作りたかったのは本当にこれなのか?と思わざるを得なかったのだが、本作にはそのような疑問を差しはさむ余地がない。ただ、短編オムニバス映画として、観ていられることが、非常に心地よい作品だ。
失礼を承知で敢えて言うなら、この作品で作者は映像作家としてのスタートをきった、と思う。自分の作りたい作品を作れるか否かは、環境が決めるわけではない。このことは作者本人が誰よりも承知しているだろう。亭主としては、新海の才能が自由に伸びてゆくだけの許容度が、この国にあることを願ってやまない。

小説・秒速5センチメートル (ダ・ヴィンチブックス)

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秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

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ほしのこえ(サービスプライス版) [DVD]

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雲のむこう、約束の場所 [DVD]

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