けろこ堂日乗(β版)

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これは王国のかぎ

いまさらながら、荻原規子の「これは王国のかぎ」である。<
実は荻原の長編作品の中でこれだけが未読だったのだ。主人公「上田ひろみ」は別の長編「樹上のゆりかご」にも登場するのだが、こちらを先に読んでしまったので、ずっと気になっていた。もっとも、この作品は「ゆりかご」とのストーリー上の関連性はほとんどない。
表紙をみれば想像できるとおり、「上田ひろみ」がアラビアン・ナイトの世界に行ってしまう話である。しかし、あまたのファンタジーとちょっと違うのは彼女を転移させる力が失恋パワーであること。これ以上はネタバレになるので控えるが、この導入からして荻原作品の世界だ。「勾玉」にしても「西魔女」にしても荻原の視点は徹底的に女の子で、それはもう少女小説といってもよい。何となく気恥ずかしいながらワクワクし、気がつくと物語の世界に自分が入り込んでしまい、最後には「やられた」と思いながらボロボロ泣いてしまう。
そして「あの登場人物達にもう一度会いたい」と思うのだ。
これが荻原作品のマジックであり、優れたファンタジーであることの証だと亭主は思う。

これは王国のかぎ (中公文庫)

これは王国のかぎ (中公文庫)

樹上のゆりかご (C・NOVELSファンタジア)

樹上のゆりかご (C・NOVELSファンタジア)