けろこ堂日乗(β版)

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遙かなるケンブリッジ

国家の品格」ですっかり有名になった藤原正彦教授の初期のエッセイである。「若き数学者・・・」は著者がエッセイストとして世に出た第一作といってよい。著者の最初の留学体験を綴ったもので、海外留学の体験談として楽しめるし、ポスドクの若手研究者の武者修行談としても参考になるところが多い。「遙かなる・・・」は、著者が研究者として成功し国費留学のチャンスを得てケンブリッジ大学へ客員研究員として赴く話。こちらは、家族持ちの海外赴任にありがちな様々な苦労が語られていてしみじみする。しかし、なんといっても当世一流の数学者との交流についての話題が圧倒的に面白い。亭主は著者の学者としての業績には明るくないので、そこについてはなんとも言えないが、少なくとも英国の数学者と対等に学術的会話ができる著者の学識と英語力については、素直に羨ましいと思う。それにしても大学教育の日英の差はおどろくべきものだ。英国の方が優れているかどうかは別として、日本の大学経営者は大学の目的をもう一度考え直してみるべきではないか。

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

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遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)

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