けろこ堂日乗(β版)

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暗号関係の本

暗号と数学の関係はとても深い。現在の情報通信や個人認証などで広く利用されている「公開鍵暗号」システムは、その理論的な根拠も強度の程度も全て数学によって説明できる。この方式は1977年にリベスト、シャミア、アデルマンの3人により発表されたRSA暗号が代表的なものとして知られている。RSA暗号を解読することの難しさは、非常に大きな数を素因数分解することの困難さとほぼ同じであるとみなされている。(ただし証明されてはいない。)これは、現状のコンピュータ技術がかなり進歩したとしても、まず安全ということだと考えてよい。(量子コンピュータが利用できる場合は安全性の条件が異なってくるため、同じレベルで比較できない)
この方式の特徴は、鍵を公開鍵と秘密鍵のペアで生成し、公開鍵の方は誰にでも教えてしまってよいということだ。そんな魔法のようなことができるなんて騙されているんじゃないだろうか?実はこの方式を発明した3人も「そんなことできるわけないじゃん」ということを証明しようとしていたのだ。ところが、オイラー関数(一般にはオイラーが世界で初めて提唱したといわれているが、日本人の和算家久留島義太が、オイラーよりも早く発見したことが知られており、久留島=オイラー関数ともいう)の性質を利用すると、非常にシンプルな方法でこれが実現できてしまうことを発見したのだ。彼らはこの業績により2002年にチューリング賞を授与されているが、それほどの大発見ということである。
実際のところRSA暗号のアルゴリズムは、いたって簡単である。ベースになっている理論もシンプルでわかりやすい。それだけに、なんだか狐につままれたような感じがするのだが、ひとたび納得してしまうと、これがまさに現代の魔法であることがわかる。現代のウイザード達の偉業に興味があるなら、以下の本を読んでみるとよい。

暗号―ポストモダンの情報セキュリティ (講談社選書メチエ)

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暗号技術入門-秘密の国のアリス

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