けろこ堂日乗(β版)

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「これがラトックの新型の威力なのか・・・」

さて、前回報告したとおり、ラトックシステムのRAL-2496UT1を聴く機会を得ることができた。


まず、決して安くはない機器を、無償で貸し出すというサービスに踏み切ったラトックシステム社の英断を称えたい。こういう姿勢が長い目で見れば市場の育成には不可欠であることを、岡村社長はよくご存じなのだろう。
おかげで、RME Didi96/8PST、Prodigy Cube、RAL-2496UT1という三機種のクロスベンチを行うことができた。
RAL- 2496UT1の仕様詳細や設計思想については、社長自らが同社のブログの中で詳しく解説されているので、そちらを参照してほしい。なかなか読み応えがあるし、USBコントローラの処理方式などの解説は大変勉強になる。また、ラトックシステムのブログの中では、ジッターについても詳しく議論がなされているが、亭主はジッター云々については、ほとんど関心がない(ただし多少の知識はある)。あくまでも再生された音に関心があるだけの「聴き専」である。こうした技術的な議論の重要性は十分認識しているし敬意も払うが、それだけで製品の価値を決められるほど、技術に詳しいわけではないことをご了承いただきたい。

それではまず、デジタル出力をVRDS-25XSのDACで聴いてみた結果を報告しよう。なお、試聴はスピーカーシステムを通じてのみ行った。ヘッドフォン出力は全く聴いていないのでご注意されたい。
といっても、報告という程の内容はない。簡潔に言えば、 RAL-2496UT1が明らかに優れているのだ。これは好みの問題を差し置いてもおそらく変わらないだろう。強いて具体的に表現するならば、RMEよりもさらに解像度が高く、微小な音の再現力が良い。全体的には音離れが良く、音場が立体的に感じられる。たとえば,打楽器の皮の張りが違って聞こえたり、弦楽器の小さな演奏ノイズ(弓のきしみやフレットをこする音など)の生々しさが違ってくる。この差は、かなりはっきりとしていて、何回も聴かなければわからないとか、思い込みだとか、というレベルではない。また、音楽を鑑賞するという目的からいっても、RAL-2496UT1の音が一番気持ちがよい。
これだけではVRDS-25XSのDACが云々、という議論も出てくるのでDP-55Vでも聴いてみたが、傾向は全く変わらない。もちろん、 DACの性能が優れているDP-55Vのほうがより滑らかで、繊細さが出る。

一方、アナログ出力(RCA)の結果はちょっと違っていて、 RAL-2496UT1よりProdigy Cubeの方が良い。これはかなり明らかな差がある。RALのRCA出力がお粗末という訳ではないが、少なくともVRDSやDP-55VのDACの音にとってかわることは無理だ。恐らく、RCA出力はモニター用として割り切って設計されているのではなないだろうか。試してはいないが、デスクトップサイズのパワードスピーカーで聴くような使い方なら十分いけるかもしれない。

すでに結論はあきらかだが、亭主が聴いた限り、RAL- 2496UT1はコストパフォーマンスの高い優秀なUSB-DDCだ。比較対象が少ないので相対評価はできないが、ローコストで音の良いDDCを買うとすれば最有力候補である。贅沢を言えば、機能をDDCだけに割り切って192KHzまで対応できる製品を出していただきたい。これはラトックシステムのようなエンドユーザ−向け製品をメインとする企業であればこそ期待することだ。国産オーディオメーカーがこれをやるとすれば、非常に高価なものになるだろうから。
高性能なDDCを手に入れたいがため、プロ用のオーディオインタフェースを使うオーディオファンも多いようだが、音響システムの素人が使いこなすのは困難であるし、機能の大半は無駄になってしまう。(プロ用機材のオーラを感じつつ、あれこれいじくるのは理屈抜きに楽しいのだが)
これは、マーケティングの問題でもあるが、「DACというオーディオ製品」と「USB-DACというPC周辺機器」の融合領域に成立しているのが、現在のPCオーディオ市場だとすれば、実は性格もコンセプトも異なる製品が一緒に議論されているとみることもできる。こうした状況がどのように展開してゆくか興味深いが、ユーザー側からみれば、より選択肢(いいかえれば組み合わせの自由さ)が増える方向に向かって欲しいものだ。
この点から、DDC とDACの機能分化というのはアリだと思う。
4〜5万のDDCで、手持ちのDACやCDプレーヤ−が活用できるとすれば、Hi-Fiから遠ざかっていたオーディオファンが戻ってくることもあるだろう。
同時にオーディオメーカーは無理にUSBインタフェースをつけたりせず、既存技術を生かした高品質のDACを常識的な価格で出してほしい。最後はアナログ出力の勝負になる以上、この部分の自由度が広がらない限りユーザーはついてこなくなると思うのだが、いかがだろうか。