けろこ堂日乗(β版)

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Something wonderful!

ついこの間「2001年だ!」と騒いだと思ったら、もう2010年である。(以下,ネタばれが含まれますのでご注意)
2001年には「HALは結局できなかった」とか「有人木星ミッションなんて無理」とかいろいろと喧しいことを言う人が多かったが、今年は「木星が2番目の太陽になるぞ!」といっても、コアなSFファン以外は反応すらしてくれないだろう。
クラーク大先生が「2010年宇宙の旅」を書いて、映画の「2001年」で思わせぶりに終わってしまった数々の謎(?)に対して、続編という形で原作者なりの回答を出したのは1982年のこと。亭主は小説版「2010年」はクラークの後期作品の中でも特に好きである。
だが、世間の評価はそうでもなかったらしく、当時はよくあるパート2ものだと思われていたり、クラーク流の楽観的未来観の典型だとか、あまり良い評判をきいたことがなかった。小説の感想は読んだ人の主観の問題だから、どういうのも勝手だが、この作品は「楽園の泉」とともにもっと評価されても良い作品だと思う。
この小説をもとにピーター・ハイアムズが1984年に映画化した「2010年」は、さらに忘れ去られた作品になってしまった。これはかなり哀しい。
主役のフロイド博士の役をロイ・シャダーが演じているのだが、残念ながら学者には見えない。また、原作のストーリーをかなりばっさり切ってしまっているので、原作を読んでいない人には意味不明のカットが含まれている。さらに、現在の発達したCG映像にならされた眼には、モニターグラフィクスなど(なまじ本物を使っているために)昔のパソコンそのものという感じで恥ずかしいし、特撮も安っぽくみえる部分が少なくない。
そうしたアラを探せばきりがない作品だが、亭主はこの映画が好きである。もちろん、特撮をリチャード・エドランドが担当していたり、プロダクツ・デザインをシド・ミードが手がけていたりということもポイントが高いのだが、何よりもクラークが原作に込めたメッセージを一所懸命伝えようとしている真剣さがこの映画の良さだと思っている。
「なんだ、それだけかよ」といわないでほしい。もちろん、この映画のラストには「2001年宇宙の旅」のような神秘(?)やエクスタシー(??)など用意されていない。それでも、クラークの原作を読んでHALの最後のセリフに思わずほろりとした人ならば、この映画のクライマックスで泣かずにはいられないだろう。タイトルの「Something wonderful!」は映画の方が印象的に使われているように思う。
その一方で、40年以上前に作られた「2001年宇宙の旅」の方が新しくみえてしまうという体験に愕然とするのも、また事実なのだが。








2010年宇宙の旅〔新版〕 (ハヤカワ文庫 SF) (文庫) (ハヤカワ文庫SF)

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2010年 [DVD]

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2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

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さよならジュピター〈上〉 (ハルキ文庫)

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さよならジュピター〈下〉 (ハルキ文庫)

さよならジュピター〈下〉 (ハルキ文庫)

クラーク大先生の原作。小松大先生の大作「さよならジュピター」といろいろな意味で偶然の一致が面白い作品でもある。 この作品、残念ながらリマスタリングが行われていないため、画質はあまり良くない。ブルーレイも出ているのだが画素数が上がっただけと思った方がよい。かえって画のザラザラ感が強調されてしまうので亭主はDVDをすすめる。 デジタルリマスター版。おそらく映像ソースとしてはこれが決定版だと思う。LDやビデオテープとは全く異なる鮮やかな色彩に面食らうかもしれない。このソースの発色についてはいろいろ意見があるだろうが、制作年代のデザイントレンドなどを考慮すると、少なくともデザイナーはこの色を本当は出したかったのではないかと思う。DVDのリマスター版をベースにしてるように思われる(少なくとも発色は同じ)。 ついでのようで申し訳ないが、小松「沈没王」大先生が今度は木星をふっとばしちゃう傑作長編。映画のことをどうこう言う前にまず読んでほしい。それにしても新版の文庫はカバーが悲惨。できれば、加藤直之画伯の表紙のものを探してください。