けろこ堂日乗(β版)

けろこ堂日乗のHatenaブログ版です。

世界の中心でiを拒んだ(らノ)ケモノ

今回はポータブルオーディオプレーヤーについて書く。言うまでもなくこの世界の中心はiPodである。おめでとうApple
亭主は、LisaもNewtonも使ったことがあるし、今でもIIciを手元に置いているくらいだから決してリンゴ嫌いなオヤジではない。iPodだってTouchが出た時は真剣に悩んだ。でもね、何かしっくり来ないのだよ。みんなiPodの音で満足してるの?って思ってしまう。もっともこの分野ではSonyがATRACにこだわって出遅れてしまったから、Appleにとっては有利な展開、消費者にとっては選択の余地がない展開になったともいえる。どこでも簡単にiPodが手にはいるのに、わざわざきいたこともないような韓国や台湾のメーカーの製品は買わないわな。でもおかげで、デジタル・オーディオがいつのまにか認知され(考えてもみてほしい。10年前にPCでCDのデータを吸い上げて、このちっちゃいのに移して聴くんだ!といったところで誰が分かってくれただろう。)、HI-Fiな人から白眼視されることも少なくなった。ありがとうApple
自ら天の邪鬼をもって任ずる亭主としては、こういう結構な世の中をもたらしてくれたAppleに感謝しつつ、だからこそiには手を出さないと誓って今までやってきた。ポータブルオーディオについて言えば、RIOにはじまり、CREATIVE ZEN Neeon、Neeon2、ZENを経て、現在はCowon O2を使用している。見て分かるとおり、O2を買うまでは安い製品ばかりである。これには訳がある。
亭主にとってポータブルオーディオの一番の用途は飛行機の中で聴くことである。長時間座りっぱなしの座席で、あのゴォーというノイズを聴いていることは耐え難く、騒音に弱い亭主は眠ることもできない。以前はカセットテープやCDを持ち込んで「おやすみミュージック」を聴いていたのだが、メディアがかさばる上、ロングプレイができないのが悩みだった。そんな時にMP3プレーヤーが市場に出始め、天の助けと飛びついたのだ。そういう用途だから最初からHi-Fiなぞ期待していなかった。何よりもメモリがせいぜい1GBという時代では、WAVファイルを持ち歩くことは現実的でなかったこともあり、ポータブルプレーヤーはあくまでもガジェットに過ぎなかったのだ。だから年に10回程度しか出番がないのに、いくら容量が大きいといっても5万円近くもするiPodに投資する気にはならなかった。
この思いが変化してきたのは、フラッシュメモリでも16GB、32GBという大容量が実現されるようになったころからだ。一昨年CREATIVEがZENをモデルチェンジし、4GBでも1万円そこそこで入手できるようになったのを機に4GBモデルを購入してみた。このプレーヤーはSDメモリを使えるので実際には4GB以上のデータを持ち歩くことができる。また、1600万色のディスプレイを搭載しており、デジカメのデータ退避用としても利用できるというのが亭主の気に入った。4GBくらい容量があると、特に音質の良いソースはWAVで、そうでもないものはMP3で、という使い分けをすれば5、6枚のアルバムをWAVで持ち出すことができる。実際こうやって使いはじめてみると、結構楽しめる。
そんな調子でZENを1年ほどオーディオ的に使ってみて、まず気になりだしたのは音声出力の品質だ。亭主のヘッドフォンはKlipsch Custom-2というバランスドアーマチュア(ツインドライバ)タイプのものだが、このヘッドポンで聴くと、Prodigy CUBEのヘッドフォン出力に比べて低域の腰や高域の伸びが明らかに物足りない。ここでまたもやアナログ出力がネックになってくるというわけだ。しかしホームオーディオと違ってポータブルデバイスでこれを解消するのは容易ではない。基本的には、よりアナログ出力の音質が良いプレーヤーに乗り換えるしかない。
もう一つの問題点は、絶対的な容量不足だ。一度音質が気になりだすと、もうMP3には戻りたくなくなる。しかしWAVでは場所が足りない。ならば音質が劣化しない圧縮方式を使うしかないではないか。
前回書いたようにApple Lossless以外の可逆圧縮方式では、APEやFLACなどがあるが、調べてみるといくつかのメーカーがAPEやFLACに対応したプレーヤーをラインナップしている(CREATIVEは対応していない)。APEの圧縮効率はせいぜい50%程度。すると8GBではアルバム10数枚分にしかならない。やはり最低でも16GBは欲しいし、できればSDメモリが使いたい、という条件も加わると機種は自ずと絞られる。
その中で亭主が目をつけたのが、現用機のCowon O2だ。この製品は、オーディオプレーヤーというよりは動画プレーヤーというコンセプトの製品で、ディスプレイはPSPと同じサイズを備え、タッチスクリーンで操作するようになっている。Cowonは結構いろいろな種類のポータブルデバイスを出しているが、オーディオ系のデコーダが充実しており、対応しているフォーマットが断然多い。こういう何でも来い型の仕様は亭主の好むところだ。O2はCowonの製品の中では最も値が張るモデルだが、Webでもあまり評判を見かけないので人気のほどはわからない。しかし、容量が16GB以上+SDメモリ対応で可逆圧縮が使えるということになると、ほぼ自動的にO2に決まる。こういう外堀埋め込み型選択も亭主の好むところだ。さらにオーディオとは全く関係がないが、SDメモリから読み込んだデジカメのRAWファイルを表示する機能がある。マルチメディアプレーヤーを謳う以上、死角はつくらんぞ、という設計者の意地が伝わってくるようでよろしい。と、まぁ、いろいろ選定理由はあるのだが、ヨドバシアキバで実機のレスポンスやファイルの読み込み速度などを確認した上で即決である。

【国内正規品】 Klipsch イヤホン Custom-2

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COWON タッチプレーヤーO2-16G-BL

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CREATIVE メモリープレーヤー ZEN 4GB ZN-Z4G-BK

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まだ、購入してから日が浅いので色々試行錯誤の途中だが、肝心の音質は明らかに改善した。価格差以上の違いはあるように思う。はっきりと差が出るのは低音で、バスドラの張りやベースの芯が違う。デフォルトのイコライジングの影響もあるだろうが、全体として力強い音になったと感じる。亭主としては好みの方向への変化なので、購入は正解だったと思っている。この機種にはCowon独自の音質調整機能がいくつか装備されているのだが、可逆圧縮ファイルの再生にはあまり意味がなさそうなので、ちゃんといじっていない。10バンドのイコライザも装備しているので、今後もう少し追い込んでみようと思う。
さてこのO2の音質だが、改善されたといってもそれはZENとの比較の話。Prodigy CUBEとの比較では、依然として大きな差がある。近いうちに確認してみようと思っているが、この差はiPodでもそれほど違いは無いだろうと予想している。ここから先は越えられない壁なのだろうか。
世の中には同じ悩みを持つ人が少なくないようで、iPodを改造して、DACから後の増幅段をバイパスした音声出力を直接取り出せるようにするサービスを販売している会社がある。Red Wine Audioという米国の会社で、この改造を施されたiPodをiModというそうである。iPodはドック用のコネクタからライン出力を取り出せるので、それだけでも音質的には有利になる。実際ラインアウト付きのドックコネクタが販売されている。しかしこの改造はもっと徹底していて、iPodのアンプ部をすっとばしてしまうから、当然単体では利用できなくなり、少なくともポータブルのヘッドフォンアンプを使う必要がある。何もそこまでしなくてもと言いたくなるが、iPodのDACの性能を高く評価する人は多いようで、CDプレーヤのかわりにiModを使うということもオーディオ・ファイルの間では広まりつつあるらしい。こうなってくるとポータブルオーディオという概念が変わってくるようにも思えるし、最近ではこのような使い方を意識したのか、小型のバッテリー駆動式ヘッドフォンアンプがいくつか登場している。亭主はまだ試聴したことはないが、USBオーディオデバイスを兼ねている製品もあり、当然Prodigy CUBEより音質が良いことが期待できる。
亭主としては、デジタル出力付きのポータブルオーディオプレーヤーがあれば色々楽しめそうだと思うのだが、現在はこのような製品は販売されていない。「現在は」というのは、実は過去には存在していたからだ。iRiveriHP-140というHDDオーディオプレーヤーがそれで、亭主は知らなかったが、一部のオーディオ・ファイルの間では結構有名な存在だそうである。こいつの光デジタル出力をデジタルヘッドフォンアンプに入れてやればポータブルデジタルオーディオが出来上がる。iPodの改造でも、デジタルアウトを取り出すまでにはいたっていないようなので、この分野はまだフロンティアが広がっていると言えそうだ。
もっともこれをやり過ぎると、かつてカセットデンスケを担いで「Walkmanより音がよいぜ」といっていた輩と同じことになるのだろう。そういう無駄は大好きだが、体力的にもお財布的にもちょっとつらい。果たして、さようならApple、と言える日は来るのか。