けろこ堂日乗(β版)

けろこ堂日乗のHatenaブログ版です。

「蟲師」という幻視

1月も終わろうという時期になって、今年の初ブログである。
ずいぶん古い作品だが、コミック版が完結したのはつい最近のこと。その主題に相応しく息の長い作品だった。
実は、亭主はこれほど話題になった作品をつい先日まで読んでいなかった。特に深い理由は無いのだが、タイトルをみてオカルト系だと勘違いしたことが大きい。
これは全くの誤解で、こんな面白い作品を見逃していたことを深く恥じ入った。
きっかけは、インターネットのアニメ配信(バンダイチャネル)で、最初の数話が無料で観られたことだ。ちょっと試しに、と思ったらとんでもない作品だった。ここ20年でつくられたアニメーションの中で、間違いなく五指に数えられる作品である。これほどの良質の作品がテレビ放映でしかも26話制作されたというのは驚く他はない。演出、作画のレベルの高さもさることながら、音楽が秀逸で作品のテイストを見事に創り上げている。(サントラCDはオーディオ的にも面白い。)
亭主は、文化庁メディア芸術祭などの一連の官製プロモーションは全く興味がないが、この作品(アニメ)がメディア芸術100選の第6位であったということは世間の目もまんざら節穴ではないのだろう。3月にはBlue-Rayボックスが発売されるとのこと。これは買いである。
アニメがあまりにも良かったので、すぐ原作を読んだ。これも素晴らしい。一番びっくりしたのは、アニメになる際にありがちな、切り捨て・付け足しがほとんどないと分かった時だ。それだけ原作の構成がしっかりしているということだが、これを過不足無く映像化しながらも、独自のテイストを創り上げたアニメーションスタッフの手腕には恐れ入る。原作は素晴らしいのに、アニメは・・・、と言わせるところが無い。原作もアニメもそれぞれ良いのである。原作つきアニメの究極のバランスを見せつけられた思いだ。
内容は今さら説明するまでもないだろうが、「この世のあらゆる生命よりも命の源流に近いもの」の総称である蟲と、蟲に関わる様々な現象の始末を生業とする蟲師「ギンコ」が主人公の物語だ。全編を土俗的な香りが包み、新緑の山のむせかえるような草木のニオイや、雪に閉ざされた山里の恐ろしいような静けさを、亭主のような都会暮らしの人間にも身近に感じさせるほど、その表現力は卓越している。蟲師のイメージソースは、南方熊楠なのか、とも思うが、作者漆原友紀のイマジネーションの豊かさはそういう枠に収まるレベルではないだろう。

子供の頃の、夏休み。
遊びに行った田舎の家の裏山で、
気がつくとみんなとはぐれてしまった時のこと。
ふと耳を澄ますと、後ろの草むらから
何かの声が確かに聞こえたはずなのに
探してみても何もいない。

そんな記憶はないか。

この物語はそんな風だ。

蟲師 (1)  アフタヌーンKC (255)

蟲師 (1) アフタヌーンKC (255)

蟲師 二十六譚 Blu-ray BOX

蟲師 二十六譚 Blu-ray BOX

蟲師 オリジナル・サウンドトラック 蟲音 前

蟲師 オリジナル・サウンドトラック 蟲音 前

「蟲師」オリジナルサウンドトラック 第二弾 蟲音 後

「蟲師」オリジナルサウンドトラック 第二弾 蟲音 後