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CONCORSO D'ELEGANZA VILLA D'ESTE 2008 (1)

自動車が競いあうのはスピードだけではない。美しさを競い合うコンクールが世界中で行われている。そんなコンクールの中の頂点のひとつに数えられる"CONCORSO D'ELEGANZA VILLA D'ESTE"が去る4月26日、27日の両日、イタリアのコモ湖畔で開催された。幸運にもこのコンクールを見学する機会に恵まれたので、その写真を交えながら感想めいたものをしたためてみようと思う。
まず、"CONCORSO D'ELEGANZA VILLA D'ESTE"の詳細については、以下の公式サイトを参考にされたい。歴史からレギュレーションにいたるまで詳細な説明がある。また、2008年の結果もすでに公開されている。
http://www.concorsodeleganzavilladeste.com/
サイトをみていただけば分かるとおり、このコンクールの歴史は1929年に遡るが、1949年を最後に永らく開催されることがなかった。その後何回かの復活の試みがあり、最終的にはBMWグループがスポンサーになって1999年に復活し今日に至っている。現在では、最も権威のあるHistoric Carのコンクールのひとつになっている。
レギュレーションにもあるとおり、このコンクールに出品するには可能な限りオリジナルのコンディションを残しているだけでなく、ちゃんと自走できなくてはならない。つまり外形だけをいくら綺麗に装っても、自動車としての機能を失っているものは対象外である。もちろんレースではないから速度を競うことはないが、どの車もちゃんと自走して会場に入るのである。
このコンクールは、出品車のレベルが高いのもさることながら、その開催地がコモ湖畔の高級ホテル"VILLA D'ESTE"であることも「格」を高めている要素のひとつだ。16世紀に枢機卿の別荘として建造されて以来、あまたの権力者の手を経て、現在はフランス人実業家の手にあるというこの美しいホテルは、Historic Carのコンクール会場としてふさわしい趣を備えている。

さて前置きはこのくらいにして、出品車の写真をお見せしよう。なお、若干の解説と感想書いてみようと思うが、亭主はHistoric Carの専門家ではないので齟齬、錯誤に関してはご容赦いただきたくお願いする。また、以下の記事は全出品車を網羅している訳ではない。選択は亭主の趣味によるものである。

CLASS A "TOURING TITANS - STATUS SYMBOLS OF THE 1920s & '30s"

f:id:mhana:20080506214943j:image:w200 No.4 Bentley 3 Litre, 1925
カタログでは黒か濃いダークグリーンになっているが、出品されたのはやや明るめのグリーン。ややベタっとした感じが残念だが、車の状態は良かった。Van Den Plasによる4座ツーリングボディは後で述べる4 1/2 Litreよりも軽快感がある。大きめの前後輪が力強い印象を与えるのはスポーツベントレーの特徴と言える。米国の多くのイベントで活躍した車で、現在の所有者はオーストリア人。
4気筒 2996cc
Carrozzeria: Van den Plas
f:id:mhana:20080506215504j:image:w200 No.6 Mercedes-Benz 680 S, 1928
6800CCの6気筒エンジンを搭載するS(スポーツ)タイプのメルセデス。新設計の低床式シャシーにより、この当時としては低い車高を実現している。また、非常に柔軟なトランスミッションにより、トップギアでも歩くような速度で動かすことができるという。スーパーチャージャーを使用すれば100マイル超での巡航が可能。出品車は非常に美麗な一台で、力強い排気音を轟かせて会場を走り回っていた。亭主の好みから言えば、ヘッドライトがやや大きすぎ、位置も高いのが気になる。
6気筒 6789cc
Carrozzeria: Erdmann & Rossi
f:id:mhana:20080506220141j:image:w200
f:id:mhana:20080506215959j:image:w200
No.8 Isotta-Fraschini 8A, 1928
エンジンもボディも当時の自動車の最高峰であったIsotta-Fraschini 8Aシリーズ。115馬力のエンジンとシンクロメッシュつき三段変速機を備え、Issota-Fraschiniの中にあっても破格に高価な一台。1929年のニューヨークモーターショーにおいてCastagnaのブースに展示された車であるとされている。この豪華な2座ロードスターを2万ドル(当時)以上も出して購入する層が当時の米国にはあったのだ。
優雅なグリルの意匠、直線的なショルダーラインとフェンダーの流麗な曲線のバランスが美しい。悠然とした車幅に対してキャビンの横幅を絞り込むことにより、ロードスターとしてのスポーティな雰囲気を演出している。出品車のコンディションも素晴らしく、特にベネチアンブルーのような青と白いアクセントストライプで塗装されたボディは見事だった。
8気筒 7372cc
Crrozzeria: Castagna
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No.10 Bentley 4 1/2 Litre Supercharged, 1930
ル・マン24時間耐久レースのホモロゲーションを取得するために50台だけ製作された2ドア4座ツーリングボディのスペシャル・ベントレー。4気筒4500ccのエンジンにスーパーチャージャーを搭載した、高性能マシンだ。この車は1930年のロンドン自動車ショーに出品されたもので、当時のオリジナル仕様を忠実に維持しているという。
Van den Plasによるボディは質実剛健ながら、あたかも筋肉質の猛獣のような迫力を感じさせ、ラジエターの前につきだしたスーパーチャージャーユニットがさらに凄みを増している。
4気筒 4398cc
Carrozzeria: Van den Plas
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f:id:mhana:20080506220727j:image:w200
No.12 Daimler Double Six, 1932
英国の映画女優Anna Neagleの夫が彼女へのプレゼントとして製作させたスペシャルボディのDaimler Double Six。その名の通り長大なボンネットの下に12気筒7200ccのエンジンを搭載するモンスターである。1990年代後半にレストアが完了するまでは、1932年に一度だけその姿を公の場に見せただけだという。漆黒のボディは素晴らしいコンディションで、特徴的な象のマスコットを戴くラジエターグリルの意匠も特注品ならではの凝ったものだ。ショウファ・ドリヴンを前提にしたと思われる4ドアボディの後部座席から、豪奢な毛皮を纏った銀幕のスターが降り立てば、まさに映画の1シーンのように華麗な光景であったろう。
12気筒 7136cc
Carrozzeria: Martin Walter
★CLASS WINNER
f:id:mhana:20080506214350j:image:w200 f:id:mhana:20080506222012j:image:w100:rightNo.14 Voisin C24, 1934
1978年にVoisinの蒐集家として名高いWurstemberger伯爵が南フランスで入手した"Charmease"と呼ばれるC24で、修復後いくつかのラリーに参加している。この"Charmease"は、Voisinの典型的な箱形フォルムから流線型へ移行する過渡期のデザインで、決してバランスが良いとは言えない。実用的な箱形キャビンに流線型フェンダーを取りあえず付けてみた、という感じである。しかし、この後C26のシャシーによって製作された画期的な流線型ボディを持つ"アエロディーヌ"に至るVoisinのデザイン変遷を知る上で重要な意味を持つモデルといえよう。アール・デコ風のマスコットはとても格好が良い。
6気筒 2994cc
Carrozzeria: Voisin
f:id:mhana:20080506221847j:image:w200 No.16 Hispano-Suiza J12, 1936
HispanoのJ12は世界中に100台がつくられ46台が現存するといわれている。このモデルと同じFernandezが製作したボディは10台存在したとされ、うち2台は99と呼ばれるノーマルシャシー、8台が102と呼ばれるやや長いシャシーを使用していた。この出品車がどちらのシャシーであるかは不明だが、おそらく102ではないかと思う。いずれにしても極めて貴重な車であることは間違いない。亭主が見たところボディはレストアの直後らしく、近寄ると塗料のにおいがした。長いボンネット、流線型のフェンダーと小さめのキャビン、後継したフロントシールドといった30年代後半のデザイントレンドを備えた流麗な4ドアボディである。
12気筒 9424cc
Carrozzeria: Fernadez & Darrin
★mention of Honour

【以下、次回】