けろこ堂日乗(β版)

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かけがえのない地球 365日空の旅

年末に親友達と会ったおり「持続可能性」すなわち「sustainability」という概念が話題になった。
この概念については様々な議論があり、その詳細を述べる知識は亭主には無いが、これからの社会システムを考えてゆくためには避けて通れないものだと理解している。亭主は「持続可能性」には経済学と生態学からのアプローチがあると考えているが、この両者をひとつの概念枠組に取り込むということが非常に難しいことは想像に難くない。
そのような理論的側面の困難さの一方で、この概念の意味するところを直感的に把握できないという困難さがあると思う。日々の生活の中で、全地球的な視点を持てといわれてもそれは無理というものだろう。
ヤン・アルテュス=ベルトランは、「空撮」という非日常的な視点を通して、我々に全地球的なイメージを提供し続けている希有な写真家だ。そのアルテュス=ベルトランがユネスコの後援で「Earth From Above」というプロジェクトを行った。その成果をまとめた写真集が本書「かけがえのない地球 365日空の旅」だ。
この写真集は、世界中の空撮写真を撮影された日付ごとに並べ、1日1枚の写真と解説を対にしたもので、非常に美しく、示唆に富んでいる。すべての写真には撮影地点の概略図と緯度・経度が付記され、どこでとられたものかが一目で分かるのだが、それはまさに世界のあらゆる地点に及んでいる。地球観測衛星のおかげで、直上に近い軌道からの衛星写真は、さほど珍しくなくなってきたが、写真家によって撮影された、空間情報付きの写真作品がこれほど一度にまとめられたということは他に類を見ない。おそらく今後もこのような試みが行われることはないのではないか。
一言で「青い地球」というが、そのなんと多様なことか。この多様さを365枚の写真に語らせるというのは、実に意欲的な企てだが、その意図はこの一冊の写真集に見事に結実している。我々は何を「持続可能」ならしめようとしているのか。そのひとつの答えがここにある。




365日空の旅 かけがえのない地球

365日空の旅 かけがえのない地球