けろこ堂日乗(β版)

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有頂天家族

森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」(d:id:mhana:20070204を参照)が第20回山本周五郎賞だそうだ。めでたいことだ。亭主はこの賞がどれほど有り難いものかは知らぬが、きっと森見氏の原稿単価アップにつながるであろうし、出版社の待遇も良くなるのだろう。
それでも不思議なことに、亭主の周囲には森見作品を愛読している人が存外少ない。亭主は、「太陽の塔」や「四畳半神話大系」にみられる、「男おいどん」的ペーソスと筒井的毒とモンティパイソン的ナンセンスギャグの絶妙な融合こそ、森見の真骨頂だと思っているが、そういうテイストを好む人はそれほど多くない、ということかもしれない。
さて、本作は「パピルス」に掲載された短編に書き下ろしを加えたものだが、連続ものとして書かれており、全体でひとつのストーリーになっている。主人公は、京都の糺ノ森に棲む狸の一家である。これに引退した老天狗、人間なのに天狗の力を会得した謎の美女などが絡み合い、例によってしょうもない騒ぎを巻き起こすというお話である。狸と聞けば、その手の趣味をお持ちの方なら、某スタジオ・ジ●リの「平成●合戦」を思い起こされようが、安心されたい。本作は次元の異なる作品である。
森見の筆致は、ますます異彩をはなって鬱陶しいくらいであるが、本作では思いの外ほろりとさせられる仕掛けが随所にある。モンティパイソンを観ていて、ほろりとしてしまってはいけないが、森見を読んでほろりとするのは、なかなか良いものだ。
本作では疾風怒濤のクライマックスから、余韻を残すような幕引きがなされているが、あに図らんや、すでに第二部が用意されているとのこと。これは期待がもてる。





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