けろこ堂日乗(β版)

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エアボーンとスカイブレイカー

数奇な運命に翻弄される少年と少女、巨大な飛行船、空賊・・・とくれば、誰しも思い出すのは、あの大カントクの「天空の● ラ●ュタ」であろう。この組み合わせは日本に限らず海外でも結構受けるらしく、カナダ在住の作家ケネス・オッベルのファンタジー「エアボーン」とその第2作「スカイブレイカー」もこのパターンを使った作品だ。
もちろんラピュ●の焼き直しなどと言うつもりは毛頭無い。むしろ航空ファンタジーとでもいうべき独自のジャンルを展開している作家として注目に値しよう。
ジュブナイルとして書かれているが、内容もヴォリウムも決して侮れないし、テンポも良い。登場人物の造形もしっかりしていて、手抜きが無い。
しかし最も特徴的なのは、「飛翔」と「浮遊」へのこだわりだ。両作品の舞台となる世界は、この世界とほんの少しだけずれた世界だ。時代は20世紀初頭、人類は航空機の代わりにハイドリウムという水素より軽い(!)元素を使う飛行船を発達させている。この大ウソを除けば、飛行船の構造や操船方法などは、マニアックといってよい描写が随所にみられる。
そしてさらに興味深いのは、空を住処にしている未知の生物が登場することだ。深海に住む未知の生物という設定をそのまま高々度の空にもってくるというのは、誰もが考えそうでいてあまりやられていないアイディアだろう。我が国では有川浩の「空の中」があるくらいか。動物ファンタジーのヒット作がある作者だけに、動物の描写や生態に関するこだわりもなかなかのもので、読み応えがある。特に「エアボーン」に登場する「雲猫(クラウドキャット)」は秀逸で、この作品の陰の主役であるといってよい。
この先、まだ続きそうなシリーズなので続編を期待したい。

エアボーン

エアボーン

スカイブレイカー

スカイブレイカー