けろこ堂日乗(β版)

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水惑星年代記

暑い毎日が続いている。そのせいかメディアに「地球温暖化」という言葉が上らない日はない。亭主には「地球温暖化」なる現象の正体を論じるための知識も情報収集力もないので、この話題については「わからない」とはっきり言うことにしている。ただし、近年の東京都心部における気温上昇は「ヒートアイランド現象」の影響であると考えている。「地球温暖化」と都市部における気温の上昇を直結させるのは短絡的に過ぎるのではないだろうか。
一方で「地球温暖化」との関連は別にして、国家的な規模でエネルギー消費を削減する取り組みは推進するべきだと考えている。バブル経済前(1980年代前半)のエネルギー消費レベルまで削減したとして、生活に不便が出るとは思えないからだ。
「地球温暖化」の証としてよく引き合いに出されるのが海水面の上昇だ。しかし、海水面の上昇が止まらず、今住んでいる町が水没してしまったら・・・となれば「まさか、極端な」と笑う人がまだ多いのではないか。その「まさか」を描いてみせるのがSF作家の領分だ。
海水面上昇どころか、日本ごと沈めてしまった小松大先生は言うに及ばず、水没した都市や世界が描かれたSFは少なくない。その中で亭主が気に入っているのは鶴田謙二大石まさるのまんがだ。鶴田作品については別の機会に書くとして、ここは大石まさるの「水惑星年代記」だ。
舞台は海水面の上昇が止まらず、町が国が水没し続けている地球。人類は、月面にムーンベースを、赤道には軌道エレベータを建造し、月以遠の太陽系に有人探査を進めている。そんな世界で繰り広げられるごく当たり前の日常を描いた連作短編集だ。
廃線の線路を歩いて行く少女。線路はいつしか水面に沈む。あと少し・・・その先に見える屋根が彼女が生まれ育った家なのだ。
土手に座って水面を眺める少女。その少女を描く老画家。画家は少女に「こんな沈みゆく世界を残してしまって」心苦しく思うと語る。だが「私には捨てきれないのです」と言い「妖精の光」を描いた絵を少女に託す。画家が捨てきれなかったものとは・・・
大石まさるの作品を読むと、SFにはまだできることがある、やってないことがある、と思えてくる。老画家は、現実の「沈みゆく世界」に直面しなければならない我々の姿であり、おそらくは作者自身の投影であろう。

水惑星年代記 (ヤングキングコミックス)

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続水惑星年代記

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環・水惑星年代記 (ヤングキングコミックス)

環・水惑星年代記 (ヤングキングコミックス)