けろこ堂日乗(β版)

けろこ堂日乗のHatenaブログ版です。

Planet Earth

よく知られたBBC制作の映像ドキュメンタリー作品だが、アメリカで発売された5枚組コンプリートBOXを入手した。NHKで放映されたものとは違い、山崎某の余分なシーンがはいっていない上にナレーションはアッテンボローである。しかも価格は国内版より圧倒的に安い。亭主が米国アマゾンより購入した価格は送料込みで約66ドルだった。もちろん、Region1に対応したプレーヤでないと観ることができないので注意が必要だ。なお、英国版はPAL方式であるため、PAL対応のプレーヤとモニタが必要になるので、一般の方にはお薦めできない。
この作品の凄いところは、決定的な映像の収録に全力を傾注していること。その一発芸的なこだわりには驚く他はない。ネイチャーカメラマンといわれるプロ集団が世界中から集めてきた驚異的な映像をひたすら詰め込んだとしかいいようのない、内容の濃さは大変なものだ。もちろんただのトンデモ映像集ではないわけで、地球の大自然のありようを極めてストレートに表現した力強さがこの作品の本領だと思う。
この作品や同じくBBC制作の「ブループラネット」を観て連想するのは、大英博物館であり、プラント・ハンターである。世界中を駆けめぐって珍奇な植物、希少な植物を命懸けで持ちかえったプラント・ハンター達と、ネイチャー・カメラマン達の活躍が重なってみえるのは考えすぎだろうか。英国の文化には、かつての大博物学時代のミームが今なお連綿と受け継がれているように思えてならない。
博物学は、荒俣宏によれば「すべてのものに名前をつけ分類する」学問である。従って、その視点の中心には常に他と隔てられた自分=観察者が存在していなければならない。この作品に共通するのは、この観察者の視点である。愛らしいカリブーの子どもや、スノーグースの雛ののどかな姿を映し出したかと思うと、彼らに捕食者の牙が、爪が襲いかかるその瞬間を克明に捉えている。観る側の感傷を無視するかのような非情なシークエンスは、ほぼ全編にわたってこれでもか、というほど繰り返される。
自然を観察する視点とはこういうものだ、ということはよくわかる。そこに安直な感傷をはさみこむべきでないということも理解できる。それでもなお、ここまで必要なのか、という疑問を亭主は退けることができなかった。捕食−被捕食の関係は大自然の最も重要な営みであることは否定のしようがない。しかし、ことさらそれを強調するのはどうなのだろう。
圧倒的な映像と見事な構成に感動しながらも、手放しで絶賛する訳にはいかない、考えさせられるところの多い作品である。

Planet Earth: Complete Collection [DVD] [Import]

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ブルー・プラネット DVD-BOX

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