けろこ堂日乗(β版)

けろこ堂日乗のHatenaブログ版です。

図書館危機

以前、とりあげた有川浩の「図書館」シリーズ第三弾である。
今回のストーリーはどちらかといえば直球勝負の熱血物語である。人様がどう評価するかは別として、亭主はこういうお話は結構好きである。何と言ってもわかりやすいし、ちゃんとツボで泣かせてくれる。こういう話が書けるというのは大事なことではないか、と思うのである。
しかし、それだけで終わらないところが曲者である。本作のポイントは表現規制。ネタばれになるので詳しくは書かないが、言葉について、表現について興味のある者なら誰でも熱くならざるを得ないテーマが、それこそ直球で飛んでくる。あまりにストレートなので、かえって現実味が薄いところが奇妙だが、それは我々があまりに緩いなれ合いにどっぷりつかっているからなのかもしれない。
だがほんの数十年前には、この国にも一冊の本のために、一枚の絵のために命を張らなければならない現実があったことを忘れるわけにはいかない。過去の時代とこの作品に意図的なつながりはないのであろうが、何かがバランスを失った時の恐ろしさと虚しさを、この作品は思い出させてくれる。
今の学校であの時代のことをどう教えるのかは知らないが、この本に書かれているような闘いがあながち絵空事ではなかったことを、若い読者が知る術があるのだろうか。






図書館危機

図書館危機