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麺の文化史

永らく絶版になっていた、石毛直道「文化麺類学ことはじめ」が、講談社学術文庫から「麺の文化史」として改訂再版された。麺の発祥、伝搬、地域性等について全世界的に網羅した労作である。著者は民族学者であり、本来食品の専門家ではないというが、豊富なフィールドワーク体験に基づいて書かれた本なので、サイドワークとは思えないような充実ぶりである。学術論文ではないので、難し言い回しや専門用語を避け、平易な表現で統一されているが、内容には全く手抜きが感じられない。世界的にも類をみない優れた麺類の考証であり、フィールドを大切にする学者の見識が伝わってくる良書である。
なお、かつての人気番組「雷波少年」で「麺ロード」という企画があったが、本書はそのタネ本と思われる。この企画は、実際にイタリアから東南アジアまで、各地の麺のレシピを調べつつ旅する、というもので、当時はやった「旅系」企画のなかでも出色の出来であったと記憶している。

麺の文化史 (講談社学術文庫)

麺の文化史 (講談社学術文庫)

レシピ・ド麺ロード ヨーロッパ・中央アジア編―雷波少年系麺ロードの旅

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