けろこ堂日乗(β版)

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遊学

亭主が松岡正剛氏の名を知ったのは「遊」という雑誌を手にした時が最初であったと思う。当時は大学の3年くらいではなかったか。なんだか難しいことが書いてあるが、格好がよい本だ、と思った。それが伝説の雑誌であることを知るのは、ずいぶん後になってからのことである。その後、情報システムの設計者として仕事をするようになり、ずいぶんたってから氏の提唱する「編集工学」というコンセプトを知った。初めはその融通無碍に変化する言葉と意味のネットワークに対して何とも言えない困惑を覚えたものである。しかし、ふりかえってみればその困惑は、自分の知識の構成方法が揺さぶられることに対する一種の抵抗であったに違いない。その抵抗を手放したとき、「ねばならない」とか「かくあるべき」というフィルターを取り除いた見通しの良い視界が手に入ったように思う。亭主はそれ以来、氏のファンである。
「遊学」は氏が編集工学的手法を意図的に使い始めた時期の著作で、「遊」の雰囲気を色濃く伝える貴重なものだ。一般の読者にとって、古代ギリシャやインド哲学、さらには現代思想から宇宙物理学までを縦横無尽に駆け抜ける氏の知的ドリブルに追従するのはかなりの努力を要する。しかし、氏の著作に共通することであるが、その文中のいたるところに氏の航跡をトラッキングするための手がかりがちゃんと残されている。だから、氏の著作には高等遊民ぶった押しつけがましさもスノビズムも感じられない。亭主はこれが氏の人柄のなせることだと思うのである。

遊学〈1〉 (中公文庫)

遊学〈1〉 (中公文庫)

遊学〈2〉 (中公文庫)

遊学〈2〉 (中公文庫)

知の編集工学 (朝日文庫)

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情報の歴史―象形文字から人工知能まで (Books in form (Special))

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