けろこ堂日乗(β版)

けろこ堂日乗のHatenaブログ版です。

ファンタジー

「蟲師」という幻視

1月も終わろうという時期になって、今年の初ブログである。 ずいぶん古い作品だが、コミック版が完結したのはつい最近のこと。その主題に相応しく息の長い作品だった。 実は、亭主はこれほど話題になった作品をつい先日まで読んでいなかった。特に深い理由は…

詩羽のいる街

山本弘の最新刊を読んだ。「詩羽(しいは)」はこの作品のヒロインの名前。おそろしく賢いことは間違いないが、決して超能力者でも異世界の住人でもない。まったく当たり前の女の子だ。彼女の仕事は「人に親切にすること」。 何しろ山本弘である。「またまた…

蒼路の旅人・天と地の守り人(三部作)

全巻を軽装版で揃えるつもりでいた「守り人・旅人シリーズ」だが、「蒼路の旅人」を読んだところでとうとう我慢できなくなり、ハードカバーに手を出してしまった。亭主と同じ羽目に陥った方は少なくなかろう。「蒼路の旅人」と「天と地の守り人」それぞれ独…

神の守り人

またも上橋菜穂子である。まぁ、好きなんだから仕方がない。 待望の軽装版「神の守り人」が発売された。買ったとたんに読んでしまったが、改めて上橋の実力を思い知らされた。 主人公であるバルサが背負う宿命、もう一人の主人公であるアスラが背負う宿命、…

有頂天家族

森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」(d:id:mhana:20070204を参照)が第20回山本周五郎賞だそうだ。めでたいことだ。亭主はこの賞がどれほど有り難いものかは知らぬが、きっと森見氏の原稿単価アップにつながるであろうし、出版社の待遇も良くなるのだろう…

図書館革命

有川浩の「図書隊シリーズ」完結編である。 前作で見せた熱血さは、ややトーンダウンしているが、これは主人公笠原郁の心境の変化を反映しているのだろう。その分、郁と堂上の関係の変化に重きが置かれている。一言で言えば、完結編らしく、きれいにまとめた…

エアボーンとスカイブレイカー

数奇な運命に翻弄される少年と少女、巨大な飛行船、空賊・・・とくれば、誰しも思い出すのは、あの大カントクの「天空の● ラ●ュタ」であろう。この組み合わせは日本に限らず海外でも結構受けるらしく、カナダ在住の作家ケネス・オッベルのファンタジー「エア…

獣の奏者

この上橋菜穂子のファンタジーが何やらのランキングで1位になったようだ。結構なことだ。いわゆる幻獣、神獣の類はファンタジーにかかせないが、その生態を物語の中核に据えた作品はそれほど多くないと思う。「獣の奏者」はそういう希有な作品だ。 闘蛇とい…

精霊の守り人

上橋菜穂子という作家を亭主は最近まで知らなかった。この不明には恥じ入るばかりだが、荻原規子と双璧をなす日本ファンタジー界のエースが、荻原と同じく亭主とほぼ同年代だという。 この作品は児童文学として数多くの賞を受賞し、外伝を含めて10冊が刊行さ…

これは王国のかぎ

いまさらながら、荻原規子の「これは王国のかぎ」である。 実は荻原の長編作品の中でこれだけが未読だったのだ。主人公「上田ひろみ」は別の長編「樹上のゆりかご」にも登場するのだが、こちらを先に読んでしまったので、ずっと気になっていた。もっとも、こ…

走れメロス

もう1ヶ月以上たってしまったが、森見登美彦の最新刊は、近代文学のリミックスである。 もっとも「小説NON」に連載された作品を収録したものなので、本書が出る前にすでに読んでいた人も多いだろう。 「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下…

図書館危機

以前、とりあげた有川浩の「図書館」シリーズ第三弾である。 今回のストーリーはどちらかといえば直球勝負の熱血物語である。人様がどう評価するかは別として、亭主はこういうお話は結構好きである。何と言ってもわかりやすいし、ちゃんとツボで泣かせてくれ…

夜は短し歩けよ乙女

何でも、この本がTV等で取り上げられているらしい。結構なことである。 亭主が森見登美彦の作品を読んだのは「太陽の塔」が最初。もう何年も前のことだ。この人は「お友だち」かもしれん、と思った。その後「四畳半神話大系」を読んで確信を得た。著者の意向…

架空の王国

「ムジカ・マキーナ」で名高い高野史緒の幻の作品が復刻された。 「復刊ドットコム」の活動により実現したものだ。 西洋史の研究者を目指す女子学生が、留学先のヨーロッパの小王国で数奇な事件に巻き込まれるお話。著者の言葉を借りれば「主人公との距離が…

ヒストリアン

”図書館小説”というジャンルがあるとすれば、この作品や上記の「架空の王国」はまさにそれではないだろうか。ややサスペンス色が濃いせいか、書店では「ダヴィンチ・コード」と並んで平積みされていることが多いが、特に関連はない。登場人物がほとんど歴史…